電脳マヴォ・スタッフBLOG:小形克宏:

縦スクロールEPUBサンプル『鳥の眼』の公開

電子書籍のマンガは読みづらいと思いませんか

現在読むことができる電子書籍(EPUB)は、ほとんどがページ単位で描かれた作品です。

今やスマートフォンやタブレットで電子書籍を読むことはごく普通になりましたが、この点でまだ紙の書籍をひきずっていると言えます。この結果、文字が小さくて読みづらい、見開きが表示しづらく作家が意図した読み方ができない場合がある等の弊害があります。

縦スクロールマンガは、スクリーン表示に最適化されたマンガ表現として韓国のWEBTOONによって生み出されました。この方式なら文字が小さくなることはなく、自然に縦にスクロールして読み進めるので、読者は画面に集中することができます。

縦スクロールマンガこそはスマートフォンに最もふさわしいマンガ表現であることは、おそらく異論のないところでしょう。

EPUB規格における縦スクロールマンガの規定

しかし、この縦スクロールマンガは、Amazonなどの電子書店で買うことはできないのが現状です。その理由は縦スクロールマンガが電子書籍(EPUB)の規格に対応していないから……ではないのです。じつは規格には、2014年改定のバージョン3.01から、ちゃんと縦スクロールを実現する規定が盛り込まれているのです。

具体的には、あらかじめ何枚かに分割した縦スクロールマンガの画像を用意した上で、OPFドキュメントのmetadata要素において、以下のように指定します(正確な作り方は「追記」で掲げた村田真さんのドキュメントを参照してください)。

<meta property="rendition:layout">reflowable</meta>
<meta property="rendition:flow">scrolled-doc</meta>

このように、規格では定義されているはずの縦スクロールEPUBですが、電子書店で買うことができず、対応しているリーダーも少ないのが現状です。

大組織である電子書店に実装を促すのはそう簡単なことではないでしょう。しかし、世の中に多く存在しているリーダーの開発者に実装を呼びかけ、対応するリーダーを増やしていけば、いつか電子書店もこれへの対応を考えてくれるのではないでしょうか。

 

縦スクロールEPUBのサンプル公開

その第一歩として、小社は電脳マヴォに掲載していた縦スクロール作品をEPUB化し、作家さんの承諾を得た上で、サンプルとしてCC BY SA 3.0ライセンスにより一般公開することにしました。

開発者のみなさんに、このデータを使って縦スクロールEPUBへの対応を進めていただきたいと考えたからです。あわせて少しでも多くの方々に、その心地よい読書体験を体験していただければと思います。

電脳マヴォEPUBスクロールファイル『鳥の眼』作:ムライ(5.8MB)

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
この 作品 は クリエイティブ・コモンズ 表示 – 継承 3.0 非移植 ライセンスの下に提供されています。

 

このEPUBデータはIDPF(International Digital Publishing Forum)でEPUB規格の策定を担当している、村田真さんに作成していただきました。同時にIDPFでもGitHubでコードを公開しています。

epub3-samples/30/vertically-scrollable-manga/

下記はリーダーアプリの縦スクロールEPUB対応状況です。

 

なお、上記調査にあたってはツイッター上で多くの方々にご協力いただきました。一連の経緯は下記にまとめてあります。協力者のみなさんに深く感謝いたします。

縦スクロールEPUBのリーダー対応状況(togetter)

 

おわりに

本サンプルは『鳥の眼』作者であるムライさんの理解と協力なしに、公開はできなかったことを付言します。ムライさん、どうもありがとうございます。そして、これからもよろしくお願いします。

 

追記(2017年9月24日)

本文でも書いた村田真さんが、縦スクロールEPUBの作り方とサポート上のヒントについて短いドキュメントを書いてくれました。英文ですが技術的に間違いがなくかえって都合よいでしょう。エンジニアのみなさんはぜひご一読ください。